
ジャン・モネ・セミナー・エクストラ “Mazzini’s Legacy and the Future of the EU/マッツィーニの遺産とEUの未来”
九州大学EUセンター「ジャン・モネ・セミナー・エクストラ」として、 Mario Maritan氏による講演会を開催いたします。九州大学の学生・教職員は、どなたでもご参加いただけます。<言語は英語>
1.日時:2025年10月16日(木)5限(16:40~18:10)
2.場所:伊都キャンパス イースト2号館5階 E-D-523
3.参加費:無料
4.お申込みについて
この講演会は、九州大学法学府CSPA科目「Development and Good Governance」および九州大学法学部「政治学演習」(蓮見二郎教授担当)の授業の一環として開催されます。履修者以外の学生、学内教職員の参加希望者はお申込みが必要です。
★お申込み方法 >>> 件名に「10/16セミナー参加希望」と明記し、①お名前(フリガナ)、②メールアドレス、③ご所属を記入の上、メールでお申込みください。E-mail: euevent@jimu.kyushu-u.ac.jp
●講師プロフィール
マリオ・マリタン(韓国 西江大学校国際地域研究所 リサーチフェロー)
マリオ・マリタン氏は、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)にて現代史分野で博士号を取得し、同大学で現代ヨーロッパ史および中東史について教鞭を執る。それ以前にも、ダラム大学とケンブリッジ大学で学ぶ。現在は、ソウルにある西江大学校国際地域研究所の研究員を務める。彼の論文は、ナショナリズムに関する主要学術誌に掲載されている。
近著『超国家的世界をめぐる闘い:トリエステ、アドリア海、ハプスブルク家、1848-1867年』(原題: The Fight for a Supranational World: Trieste, the Adriatic and the Habsburgs, 1848-1867)が、パデュー大学出版局より刊行予定。
●概要『マッツィーニの遺産とEUの未来』
本講演では、欧州連合(EU)の未来が、独裁的なロシアのような外的脅威だけでなく、現在も続く遺産、特にナショナリズム、といった内的問題によっても損なわれることを提示する。
EU加盟国全体において、ヨーロッパの国家的・ナショナリズム的側面は、ハプスブルク帝国を含む多民族国家の実験という長い歴史の中で、国家の自己正当化の手段として強調されてきた。政治学において現在、ナショナリズムは、国家を機能させるのに必要不可欠な構成要素と見なされ、共同体を結びつける建設的な力として捉えられている。しかし、ナショナリズムは、国民を均質で共同体の目標に駆り立てられる存在と捉えるヨーロッパ特有のイデオロギーである。個人は、国家の集団生活に溶け込み、個性を失うことが想定されている。したがって、ナショナリズムは、民主的であるゆえリベラルであると描写しようとする試みにもかかわらず、非リベラルなイデオロギーである。 この教義は、イタリア統一運動の指導者の一人であるジュゼッペ・マッツィーニによって精緻に構築された。彼は、ヨーロッパ大陸は、それぞれ独自の国家を設立すべき別個の国家で構成されていると構想した。EU の前身である多民族国家ハプスブルク帝国は、彼のこの構想の延長上に存在している。マッツィーニの理想は「諸国家の兄弟愛」であったにもかかわらず、彼は矛盾にも、後にウッドロウ・ウィルソンによって実現され、今日まで続くヨーロッパ分断の基礎を築いてしまった。その過程で、国家の物語や政治学者は、ハプスブルク帝国を時代錯誤として、歴史の屑籠に葬り去ってしまったのである。